少し昔、この国にはあるひとりのお姫さまがいました。
お姫さまは、自分がお姫さまだというのがあまり好きではありませんでした。
というより、自分がお姫さまだというのになんの意味も感じられなかったのです。
お姫さまの上には、ふたりの姉姫さまがいて、ふたりの兄王子さまがいました。
お姫さまは末の子で、それゆえに王様からも王妃様からもかまわれず見むきもされませんでした。
王宮の離れに住まいをあたえられ、側仕えの侍女もひとりいるきりです。
それを恨んだことはありません。
姉姫さまがたや兄王子さまがたをうらやんだこともありません。
そもそもお姫さまは豪奢なくらしにも、ひとにかしずかれることにも興味はありませんでした。
ただ、自分がいなくとも王宮はなにもかわらないのではないか?
そう思うと、やはりお姫さまには自分がお姫さまである意味など、いっさいない気がするのです。
だからお姫さまは、自分がお姫さまだというのがあまり好きではありませんでした。
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